地下の国へ行った弟 5
屋久島の民話、「地下の国へ行った弟」その5です。
「ああ、こりゃ不思議なこともあるもんじゃ。」
弟は尻をなでながら向うへ歩いてみました。
ところが、頭のひらべったい、おかしなかっこうの人間たちが何人もいました。
「おい、そのびんた(頭)はいけんしたとや。」
「おまえたちの国からおさえられて、びんたまで、ひらたくなっているのじゃ。ここは下の国じゃよ。」
「ほほう。そうか。ところでおれは腹がへったから飯を食わせてくれんか。」
「じつはおれたちも食うものがなかのじゃ。その先で鹿が作物を荒らしてしまった。
その鹿をおまえの矢で射殺してくれんか。その鹿をおれたちにも食わしてくれ。」
弟はその畠に行って待ちぶせていて、みごとに鹿を射止めました。
そして火で焼いて下の国の人たちと腹いっぱい食べました。
「ところで上の国へもどる道はなかか。」
「あることはあるばって、途中に大きな川がある。
その川に大蛇がおるから、だれもそこを通ることができない。
じゃばってん、その大蛇におとうしゅうなかじゃいば、大蛇がぬけた皮がここにあるからそれをかぶって行くがよい。」
そこで、弟は大蛇のぬけがらをかぶってどんどん歩いて行きました。
なるほど途中に川があります。
大蛇が赤い目を光らせて、シャバ、シャバ、シャバと、音を立てて寄ってきました。
が、大蛇の皮をかぶった弟を見ると、大蛇はくるっと向きをかえて、またシャバ、シャバ、シャバと、向うへ泳ぎ去って行きました。